COLUMN弁護士コラム

2020.01.29

交通事故による損害保険の保険金について

交通事故は、一時期に比べてかなり減少してきた。

しかしながら、交通事故に遭った被害者は、その治療が必要なことや就業が困難になる事によりそれまでの生活を継続することが著しく困難になる事が多い。そのような事を考慮してか一般社団法人日本損害保険協会は、平成30年3月「損害保険の保険金支払いに関するガイドライン」を制定して、各損害保険会社に交通事故の被害者に対する保険金支払いについて被害者の状況や心情等に配慮した専門家としての対応を求めている。

 

しかしながら、現実の損害保険会社の交通事故被害者に対する対応を見ていると、一般社団法人日本窓外保険協会が定めた「損害保険の保険金支払いに関するガイドライン」を到底理解していない対応をする損害保険会社が多数存在する。損害保険会社は、交通事故の示談交渉権を有しているが、そもそも交通事故の損害賠償の示談交渉権は法律事務であり、弁護士法第72条により法律事務は弁護士のみがなし得るとされている。損害保険会社に交通事故損害賠償の示談交渉権が認められた経緯についてここでは述べないが、交通事故の損害賠償に関する示談交渉権を有する保険会社は、交通事故の被害者に対する損害賠償をなすに当たって弁護士と同等の善管注意義務を負っていると言わなければならない。

 

当事務所で近時扱った事件の中で被害者が椎間板ヘルニアの切除手術を受けてその後遺症に苦しんでいるにもかかわらず、その保険会社は、単にその 被害者がかつて後遺症第14級の認定を受けたことがあるという一事をもって、椎間板ヘルニア切除手術の為に被害者が入院する直前に治療費の支払い等の一切の対応を打ち切った。のみならず、その保険会社は、その被害者が開業医の紹介で大きな病院の治療を受けかつ後遺症診断書が作成されることを予想しながら、被害者がその大病院に罹ったことを伏せて裁判所に債務不存在確認の訴訟を提起してきた。当然のことながら当事務所は、その訴訟に対応する他はないが、その被害者は、後遺症認定を請求している段階なので損害賠償請求は、後遺症認定がなされた後のことになるのでまだ先の話である。

 

その損害保険会社の責任は、裁判の中で請求するとして相手方保険会社の代理人弁護士は、弁護士の使命をどのように考えているのであろうか。弁護士法に規定された弁護士の使命は、基本的人権を擁護し社会性を実現することである。この代理人弁護士の訴訟遂行は、弁護士法で規定する弁護士の使命の観点から是認されるか否か確認する必要があると考えている。

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